ユアクマ

とある村の話である、その村には山奥に万病に効くと信じられている秘湯があり、村人たちも病気をするとそこに入りに行っていた。

だがそこの秘湯にはある言い伝えがあった。

・一人では行ってはならない

・夜に入ってはならない

・これらの言い伝えを守らないと湯悪魔という妖怪に襲われる

なぜこの言い伝えが生まれたか、それはいつ頃からかは定かではなかったが、一人で入るまたは夜に入ると翌朝全身傷だらけになった無残な姿となって発見されるということが相次いだのだ。

その中でも達吉という男は唯一命からがら逃げることが出来たものの、数日後には力尽きてしまった。

だが達吉は妻に襲ってきた「何か」の容姿を伝えていた、その「何か」は熊のような見た目だが目が四つ、口が二つあるという異型としか形容が出来ないモノだった。

村人たちは恐れおののきその化物を湯に棲まう魔物「湯悪魔」と名づけた、そしてこれ以上犠牲者が増えることを恐れた村人たちは上記のことを代々語り継ぐことにしたのだった。

 

それからいくつもの年月が経ち、村の若者たちが度胸試しも兼ねて「湯悪魔」の正体を暴いてやろうと連日連夜一人ずつ秘湯のそばで張り込むことにしたのだ、流石に若者たちも言い伝えは聞いており丸腰で張り込むわけではなく仲間の一人で正治というのが親父が熊撃ちをやっており、勝手に猟銃を拝借して臨んだ。

ある夜、その正治が張り込んでいた時に遂に現れた、そう「湯悪魔」だ。

こちらの存在に気づいたそれはこちらに向けて一目散に走ってくる、無我夢中で猟銃を撃ち気づいた時には息絶えた「湯悪魔」が居た。

「湯悪魔」の正体はただの熊だった、達吉は恐怖のあまり幻覚を見ていたのかもしれない。

更に年月が経ち秘湯と呼ばれた場所は整備され立派な建物が建ち、老若男女誰でも安心して入ることが出来る温泉となったが、言い伝えを忘れないようにかそばにはひっそりと「湯悪魔」についての石碑が立っている。

そして十数年前のことであるがゆるキャラブームに乗っかりその村でもゆるキャラを作ろうと村役場で気運が高まった際に持ち出されたのがかの言い伝えであった、最初は負の一面もあることから難色を示す者も居たが発注をかけていたキャラクターデザインの案が送られた時には皆がそのかわいさに圧倒されもう誰も反対する者は居なかった。 

そうして生まれたのがこの「ユアクマ」だ。

かわいさのあまり村のゆるキャラの枠を越え、皆から愛されるキャラクターとなった。

最近ではノクチルの市川雛菜もファンであることを公言しておりさらに注目が高まっている。

ユアクマの活躍に今後も目が話せない。

 

はい。